重心位置とバランス制御、姿勢の関係とは?

重心位置とバランス制御、そして姿勢には深い関係性があります。

まず、理想的な姿勢とはなんでしょうか?

筋の負担が一番少ない姿勢、関節の負担が一番少ない姿勢、心理的に落ち着く姿勢など、様々な意見があります。

姿勢を紐解いていく上で、重心の位置や足にかかる力を見ることは必要不可欠です。

そして、私たち人間は姿勢制御を行う上で、前後バランスと左右バランスで異なる制御を行っています。

今回は姿勢と、重心バランス、そしてインソールとの関係に関してお話します。

  • 理想的な姿勢とは?

理想的な姿勢とは、筋による支持が最小である姿勢関節への応力が最小である姿勢靭帯や筋によって支持する負荷が最小である姿勢など、様々な意見があります。

しかし、共通している点として、姿勢のアライメント異常が関節や筋の構造に影響を与え、こうした機能障害が様々な問題を誘発しているという考えが前提とされていることです。

また、足部のアライメント異常は、足だけでなく他の体節へも影響を及ぼします。

そして、姿勢およびその制御には外力の影響が大きいのです。

  • 姿勢制御の方法
  • 静止立位とは

姿勢制御を考える前提として、止まって立っている状態のことを正しく理解することが大切です。

静止した立位状態を考えたとき、立位姿勢が保持されているのは、重心(COG)にかかる重力足底圧中心(COP)にかかる床反力の大きさは一致し、それぞれのベクトルが向き合って打ち消しています。

それぞれの力が拮抗し打ち消しあうことで、静止して立っている状態は保持されています。

立っているとき、重心と足底圧中心(COP)は一直線に繋がっているのです。

そのため、重心を床に投影した影がCOPであるため、COPの位置から重心の水平面上における位置は推測できます。

なお、重心が足部を囲う支持基底面から外れると、静止した状態を保てなくなり倒れてしまいます。

そして、姿勢制御において、矢状面(前後バランス)と前額面(左右バランス)での制御は異なる制御系に基づいて管理されています。

  • 矢状面における姿勢制御(前後バランス)

静止立位における重心・COPの位置は、足関節軸の約30~60mm前方と言われています。

・Kendall, F. P., McCreary, E. K., Provance, P. G., Rodgers, M., & Romani, W. A. (1993). Muscles, testing and function: with posture and pain. Baltimore, MD: Williams & Wilkins.

・Rothwell, J., & Lennon, S. (1994). Control of human voluntary movement. Physiotherapy, 80(12), 869.

・Danis, C. G., Krebs, D. E., Gill-Body, K. M., & Sahrmann, S. (1998). Relationship between standing posture and stability. Physical Therapy, 78(5), 502-517.

・Opila, K. A., Wagner, S. S., Schiowitz, S. T. A. N. L. E. Y., & Chen, J. O. H. N. (1988). Postural alignment in barefoot and high-heeled stance. Spine, 13(5), 542-547.

この時、常に足関節には足に加わる力(床反力)による背屈モーメントが作用しています。

モーメントとは、“関節周りに働く回そうとする力(図の回る矢印)”と考えていただければ大丈夫です。

床反力による背屈モーメントによって身体の前方への倒れてしまうのを防ぐために、ふくらはぎの筋肉が踏ん張って制御する必要があります。

このふくらはぎの筋肉よる足関節の制御機構を、Ankle Strategy(アンクル ストラテジー)といいます。

・Winter, D. A., Patla, A. E., Prince, F., Ishac, M., & Gielo-Perczak, K. (1998). Stiffness control of balance in quiet standing. Journal of neurophysiology, 80(3), 1211-1221.

・Gatev, P., Thomas, S., Kepple, T., & Hallett, M. (1999). Feedforward ankle strategy of balance during quiet stance in adults. The Journal of physiology, 514(3), 915-928.

・Loram, I. D., Kelly, S. M., & Lakie, M. (2001). Human balancing of an inverted pendulum: is sway size controlled by ankle impedance?. The Journal of physiology, 532(3), 879-891.

繰り返しますが、一般的には足関節軸より前方に重心・COPは位置しています。

そして、外力に対してふくらはぎの筋肉が働いて姿勢を保持しています。

ですが、重心を後ろに位置させCOPを足関節軸の真下におけば、てこの原理(軸位置に力を加えても回転する力は生まれない)の観点から、ふくらはぎの筋肉は使わなくて済みます。

何故、重心とCOPは足関節より少し前方に位置しているのでしょうか?

それは、主に次の3点の理由が挙げられます。

①歩き始めるための前方への踏み出し準備のため

歩行動作はよく“倒れながら前に進む動作”と表現されています。

足関節より前にCOPが位置していると、ふくらはぎの筋肉が踏ん張らないと外力により身体は前方に倒れていきます。

実はこれが、歩き始めなのです。

立っているときはふくらはぎの筋肉のスイッチ“ON”にしていて、歩き始めるときに“OFF”にすることで身体は前に倒れはじめ、スムーズな歩き始めに繋がるのです。

COPの位置が足関節を通る位置にあると、身体は前へ倒れてくれません。

スムーズな歩き始め動作のために、COPは足関節より前方に位置しています。

②緊急時のStepping Strategyを容易にするため

急な動揺が生じたとき、ひとは足を踏み出して転倒しないように姿勢制御を行います。

これをStepping Strategy(ステッピング ストラテジー)と言います。

この姿勢制御を行うにあたって、重心位置が過度に前方・後方にあると急な動揺に対してスムーズな対応ができなくなってしまうのです。

③体性感覚入力の感度を高めるため

重心位置が過度に前方・後方に寄ると、足の感覚も偏ります。

言わずもがな、私たちの感覚神経は姿勢制御の要の1つです。

また、求心性感覚神経の感受性は下腿三頭筋の持続的収縮により高められ、1度に満たない足関節角度変位に対応しているとされています。

感覚神経と筋が連動することは、私たちの身体は細かな姿勢制御が可能となるのです。

・Rothwell, J., & Lennon, S. (1994). Control of human voluntary movement. Physiotherapy, 80(12), 869.

・Gatev, P., Thomas, S., Kepple, T., & Hallett, M. (1999). Feedforward ankle strategy of balance during quiet stance in adults. The Journal of physiology, 514(3), 915-928.

・Fitzpatrick, R., & McCloskey, D. I. (1994). Proprioceptive, visual and vestibular thresholds for the perception of sway during standing in humans. The Journal of physiology, 478(1), 173-186.

 

  • 前額面における姿勢制御(左右バランス)

前額面(左右バランス)では、左右の荷重比によって制御されています。

荷重比とは、左右の足裏にかかる体重の比率のことです。

その荷重比は、股関節の内・外転筋群により制御されています。

この機構を、Load/Unload Mechanismと言います。

Winter, D. A., Patla, A. E., Ishac, M., & Gage, W. H. (2003). Motor mechanisms of balance during quiet standing. Journal of Electromyography and Kinesiology, 13(1), 49-56.より引用

・U2メディカルインソールの設計

弊社のU2メディカルインソールは、こうした姿勢制御理論をもとに設計されています。

U2メディカルインソールは、矢状面(前後バランス)では足関節より前方、前額面(左右バランス)に関しては左右対称の荷重となるよう設計しております。

矢状面(前後バランス)における荷重変位により、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋・後脛骨筋・長腓骨筋・長趾屈筋等)に適度な収縮を持たせ、スムーズな前方への踏み出しや動揺に対するStepping strategy へつなげることができます。

また、前額面(左右バランス)における荷重は左右均一になるようにすることで、股関節内/外転筋群の収縮・緊張は均一になり、左右動揺の減少にもつながります。

足部のアライメント異常は、姿勢・足部や上位関節・筋の構造に影響を与え、こうした機能障害が様々な疼痛に繋がります。

外力と姿勢は密接な関係があり、外力によって動作時における筋活動は異なります。

そのため、足部のアライメントを矯正するだけでなく、外力も考慮したU2メディカルインソールが必要となるのです。

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